幾五郎ブログ第二段 「書状集」解説 続き
- kagiyaco
- 2022年11月9日
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本書「書状集」の持ついま一つの価値は、従来その内容を知ることができなかった「韓牘集 要」の欠落部分を保存している点である。例えば、「韓牘集要」の第27通であるが、これは、 途中で文意がつながらなくなっているところがある。ところで「書状集」と比較してみると、「書状集」の第27通の後段から第29通の前段にかけての部分が欠落しており、本来3通の書簡 であるものを一つの書簡のようにまとめてしまった結果、文意がつながらなくなってしまった ものであることが判明する。
「韓牘集要」 【第27通】 밤이 僉中 平安오신 문안 아고 져오며今日開市雨勢如此기 로 못 오니 섭〃오며 一代官 米手標 今日 (以下欠落) 「書状集」 【第27通】 밤이 【移】僉中 平安오신 問安 아고 져 오며 今日 開市 雨勢 如此기로 못 오니 섭〃오며 一代官 米手標 今日內로 내여 보내셔야 明日 出庫에 捧出{봉츌}게 엿오니 브 出給오시고 去番 開市날 梁 同知{량동지} 오되 代官中 出物 잇거든 上送 라 던 거시오매 긔별오니 보내려 시 거든 /29b/ 今日 出送쇼셔 手標도 今日 보내셔야 일 타게 엿오니 어제 卞 同知도 어궁이 니고 都中으로셔 편지 왓와 브 오 내게 片紙라 오매 뎍이다 그 이 別開 市가 될가 시브오니 드러가오면 말새이다 【和訳】 夜の間、皆様方ご平安の段、お伺い申し上げま す。今日開市は雨の勢がこのようでございますた め、できませんので残念でございます。一代官の 米の手形を今日中に出給して送ってくださらなけ れば明日出庫のときに受け取ることができません ので、是非とも出給してくださり、この前の開市 の日に梁同知が申しますに代官方のお出しになる 物があれば上送するように申しておりましたもの ですのでご連絡いたしますが、お送りになるおつもりでしたら今日出送してください。手形も今日お送りくださらなければ明日受け取ることができませんので、昨日卞同知も言葉に窮して申しましたし、また都中(商人たち)から手紙が参りまして是非とも今日出給するように手紙を送れと申しますので、お便りいたします。そのうちに別開市ができるかと思いますので、入館いたしましたら お話いたしましょう。 【第28通】
日氣{일긔} 極熱{극열}오니 긔운 평안신 문안 아고져 오며 건너오신 긔별을 數日前 의야 듯오니 보든 못여도 반갑고 깃브 오믈 어이 다 긔벌올고 나 喪三年{상삼년} 을 지내고 今春의 漂差 差備 막겨 려가려 엿더니 마 病 드러 못 가오니 그런 /30a/ 섭〃 일이 업서 나 常時 凡事를 조심여 더니 至於今年여 白絲와 人蔘 下送之物이 다 代官 나무라 極劣品으로 잡으 시니 죵시 이러 오면 졸연 大敗여 다시 扶 支{부지}치 못 사이 되게 엿오니 이런 이 업슨 일 업외 아모려도 代官 념녀여 사을 扶支케 여 주시믈 라올 이도쇠 말 지리 너기실가 여 긋치 여러 만의 건너와 계니매 의 무궁오되 薄物{박믈}로 이 졍을 表{표}오니 笑留{쇼류}심 라 【和訳】 気候が極めて暑うございますが、お元気でい らっしゃいますでしょうか、お伺い申し上げます。(対馬から)ご渡海なさったという知らせを数日前になってようやく承りまして、お目にかかることはできずともうれしく喜ばしいことはどうして書き尽せましょうか。私は三年の喪を過ごし まして今春に漂差使の差備官に当たって(釜山 へ)下って行こうとしておりましたところ、ちょうど病気になって行けませんので、斯様な残念なことはないと思っております。私は常々すべての事を用心深く行ってまいりましたが、今年に至りまして白糸と人蔘の下送した物がすべて代官方が お叱りになりまして極劣品とされましたので、最後までこのようでござれば突然大損いたしまして 再び持ちこたえることのできない者になりましょうにより、斯様な途方もないことはございませ ん。何とかして代官方がお気遣いくださいまして 人を持ちこたえることができるようにしてくださいますことを願うのみでございます。お話をたいくつに思われるかと存じ、止めておきます。多年ぶりにご渡海なさいましたので、気持ちは限りございませんが、つまらぬ物にてこの情を表しますので、ご笑納くださいますようお願い申し上げます。
【第29通】 두어날 이 더위 심오니 【隔】平安신 문안 아 /30b/ 고져 오며 【右】僕은 어제이 려가셔 보고 오져 엿더니 暑感氣連{셰감긔운}이 이셔 못 려가고 섭〃히 지내오며 特送船{특 송션}은 나오 本宅{본} 消息{쇼식}이나 平安시더니잇가 문안 알고져 오며 今番이나 秋參 價銀이 나왓지 브 念慮심 라오 며 今般 被執 參도 公論들이나 여 보오신지 果然落本곳될양이오면의논오시고還出{환 츌} 일이 올흘 시브오니 브〃〃 너 비 의논시믈 라오며 活鷄{활계} 六首{육 슈} 보내오니 반찬의나 쇼셔 新接{신 졉}으로 나오신 오매 아모란 찬믈이나 어 더 보내 /31a/ 고 시브오나 자실 거슬 엇지 못여 섭〃 여이다 数日後 려 가올 거시니 긋치이다 편지 보시고 업시 하쇼셔 【和訳】 数日の間、暑さが酷いですが、ご平安の段、お伺い申し上げます。私は昨日のうちに下って行ってお目にかかって、帰って来ようと思っていましたところ、夏風邪の気運があって下って行けず、 寂しく過ごしております。特送船は出来いたしましたけれども、本宅の消息などもご平安であられるでしょうか、お伺い申し上げます。今回でも秋の人参を買うための銀が出来いたしましたでしょうか、必ずお気におかけくださいますようお願い 申し上げ、今般の売込み人参も公論などでもなさってごらんになられたでしょうか、ほんとうに損になるようすでさえあれば、議論なさって還出することが正しいようでございますので、必ず広く議論なさることを望みます。生きた鶏六羽を送 りますので、一時のおかずにでもお使い下さい。 新接に出て来られたばかりの時でございますで、 何かおかずでも求めて送りたいのですが、召し上がるべきものを入手できておらず残念でございま す。数日の後に下っていきますので、これにて終ります。手紙をごらんになったあと、消去なさってください。
「韓牘集要」
(以上欠落) 僕은 어제이 려가셔 보고 오쟈 엿더니 暑感氣連이 이셔 못 려가 고 섭〃히 지내오며 特送船은 나오 本宅 消息이나 平安시더니잇가 문 안 알고져 오며 今番이나 秋蔘 /26:a/ 價銀이 나왓지 必念慮심 라오 며금번피집도公論들이나여보 어신지 과연 落本곳될 양이오면 議論 오시고 還出 일이 올흘 듯 시브오 니 必々 너비 의논시믈 라오며 活鷄 {활계} 六音 보내오니 반찬의나 쇼셔 新接{졉}을 나오신 오매 아모 찬믈이나 어더 보내고 시프오나 자실 거슬 엇지 못여 섭〃여이다 数日後 려 가올 거시오매 긋치이다 편지 보시고 ■ 하쇼셔 【和訳】 夜の間、皆様方ご平安の段、お伺い申 し上げます。今日開市は雨の勢がこのようでございますため、できませんので残念でございます。一代官の米の手形を今日(この部分欠落)私は昨日のうちに下って行ってお目にかかって、帰って来ようと思っていましたところ、夏風邪の気運があって下って行けず、寂しく過ごしております。特送船は出来いたしましたけれども、本宅の消息などもご平安であられるでしょうか、お伺い申し上げます。今回でも秋の人参を買うための銀が出来いたしましたでしょうか、必ずお気におかけくださいますようお願い申し上げ、今回の売込み人参も公論などでもなさってごらんになられたでしょうか、ほんとうに損になるようでしたら、議論なさって還出することが正しいようでございますで、必ず広く議論なさることを望みます。生きた鶏六匹を送りますので、 一時のおかずにでもお使い下さい。新接 に出て来られたばかりの時でございますで、何かつまらない物でも求めて送りたいですが、召し上がるべきものを求められなくて残念でございます。数日の後に下っていきますので、これにて終ります。手紙をごらんになって、■なさってください。
このように、本書「書状集」の出現によって、「韓牘集要」の欠を補い、より完全な祖本の再構が可能になったことは、学界の一大慶事と言わねばならない。 以上、この解説においては、鍵屋歴史館所蔵のハングル書簡集「書状集」を紹介し、該書が 薩摩苗代川に伝来した朝鮮語学書の「韓牘集要」の一異本というべきものであり、「韓牘集 要」の淵源が対馬にあることを具体的に示す物証であること、両書を比較することによってより完全な祖本の再構が可能になることなどを述べてきた。このたびの本書の画像の公開が、この分野の研究に新たな局面を提供することを確信する。
參考文獻
岸田文隆(2009)「『隣語大方』の淵源:『朝鮮語訳』と『韓讀集要』」第1回譯學書學会創立總會 및 學術會議, pp.72-84. 又石大学校 岸田文隆(2010)「朝・日 語学書「隣語大方」の淵源」 李東哲編『日本語言文化研究』pp.65-72. 延 辺大学出版社 金文姫(2018)「「韓牘集要」と「隣語大方」」 日本語文學77, 213-237. 한국일본어문학회 金文姫(2019)「近世期日朝対訳資料の研究―「隣語大方」を中心に―」大阪大学博士論文 http://hdl.handle.net/11094/72341
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